HTHS粘度について

HTHS粘度( High Temperature High Shear Viscosity)高温高剪断粘度の意。

通常の測定方法は、オイルを40℃と100℃に温めた状態で測定した数字を表しています。
数値の単位は cSt センチストークスで表記されオイルの流動に要する時間を計測しています。
エンジン始動時や通常走行時 (低温低負荷) では、40℃の数値が低いほど粘度抵抗が少なく、省燃費性に優れますが、サーキット走行の様な高温高負荷時の厳しい走行条件では、100℃の数値がある程度高くないといわゆるシャバシャバ状態になり、熱ダレを感じる事があります。(エンジン回転に対してトルク感を感じない状態)
マルチグレードオイルに於いて、低温と高温をカバーする温度帯が大きい程、高温時の熱ダレした時の落ち幅が大きい傾向にあります。(ベースオイルや添加剤の質等にもよります)
高油温高負荷時が連続する場合の使用に於いては、ショートレンジ やシングルグレード(0W-30より#30/5W-50より20W-50等) の方が粘度変化の落ち幅が安定志向になります。(粘度指数向上剤等の配合率が少ない或いは無い為)
しかし、100℃時の動粘度を計測しているだけですので、粘性(ねばり)がどの程度のオイルなのかの目安程度にはなりますが、油膜の強さの目安にはなりません。
そこで過酷な条件下でオイルの油膜の強さを測定する数値である HTHS粘度の数値が過酷な条件下で使用する際の一つの指標として有効となります。
HTHS粘度の測定方法は、油温150℃時に金属と金属を負荷を掛けて擦り合わせ、どの位のトルクが必要かを測定するTBS (Tapered Bearing Simulator) 粘度計測が用いられます。(下図参照)
動粘度計測法と違い、より過酷な環境下での実効粘度を評価する項目としてHTHS粘度規定が定められていますので、高温高速な摺動面における実効粘度といえるHTHS粘度が高い程、摺動面の摩耗量は少なく高負荷にも対応出来ます。
その反面、粘性抵抗が増え燃費が悪化する事とのトレードオフとなりますので、どの領域の性能を重視するかでオイルの選択が変わると言えます。
現在の省燃費傾向にある自動車メーカーでは、0W-20や5W-20等の低粘度省燃費オイルが主流になってきており、それらのオイルではHTHS粘度は2.6-2.8前後と低粘度傾向になってきています。(油温130℃以上での使用で急激に摩耗量が増える傾向にあります)
HTHS粘度は下げれば下げるほど省燃費に寄与しますが、2.6を下回ると摩耗量が飛躍的に増加する為、現在の規格では、0や5W-20の下限値は2.6となっています。
その為、省燃費オイル開発においては150℃時のHTHS粘度を2.6以上確保しつつ燃費への影響が大きいと言われる100℃時におけるHTHS粘度を如何に低減するかも重要となっています。(150℃時のHTHS粘度を上げると100℃時の流動抵抗が増大してしまう為)

【低HTHS粘度】
メリット :流動抵抗少なくエネルギー伝達効率が高い
デメリット:高温高負荷時の金属摺動部の摩耗量大・中高温時の希釈が大きい
【高HTHS粘度】
メリット :金属摺動部の摩耗が少なく熱ダレや希釈に強い
デメリット:低温域での抵抗が比較的大きい

TBS粘度計測
【HTHS粘度が低い】
メリット :流動抵抗少なくエネルギー伝達効率が高い
デメリット:高温高負荷時の金属摺動部の摩耗量大・中高温時の希釈が大きい

【HTHS粘度が高い】
メリット :金属摺動部の摩耗が少なく熱ダレや希釈に強い
デメリット:低温域での抵抗が比較的大きい